「住みたい街」を可視化する
動機
「住みたい街」ランキングというものが毎年公開されますね. しかし, 上位の街のいくつか (目黒, 恵比寿, 横浜)に住んだ上でランキングを見ると, 2018年版のランキングで1位の「横浜」が一体横浜市内のどこを指すのかが曖昧だったりと, 「どのような街」が住みたい街なのかは不透明だと感じます.
そのため, 本記事では住みたい街を地図上に可視化し, 「住みたい街」の定量化を目指します.
前提
住みたい街は, 以下のような基準
(住みたい街ランキング2018 関東 総合ランキング)
で集計されているらしいです.
- 調査対象: 関東圏在住の20-49歳の男女7000名
- 駅名を回答
また, マンションなどの物件名決定には, 以下のような不動産の表示に関する公正競争規約に基づく制約が存在します.
- 慣例として用いられている地名/歴史上の地名
- 最寄り駅や最寄停留所の名称 -> 市名/通称, 方角 (○○東)を含めると使用可能
- 直線距離で300m以内に存在する公園などの施設名
- 物件が面する街道/道路/坂の名称
データ
以下のデータを, スクレイピングにより取得し, 可視化に用いました.
- SUUMO: 住みたい町の上位ランキングを取得: 1位から130位までの名前 (駅名)を取得
- 住まいサーフィン: マンション名の取得: 1. で得た各駅名について検索, 取得ミス/一部地名 (東京駅など)は除外
- GoogleMap API: 地理情報の取得: 126地名, 10035物件データを取得/可視化
可視化手法
取得した地理情報と物件名データを
TopoJSONによる地図上にマッピングしました. 可視化ライブラリにはD3.jsを用いました.
物件名 + 地理情報 に加えて以下の属性を用いました.
- num: 物件数
- rank: 住みたい街ランキングにおける順位
- type: 住みたい街の名前が自治体名か否かを表すラベル
- area: 地名毎の物件集合の凸包の面積
- sparse: 物件の散らばり: 凸包の面積 / 物件数
- distance: 対応する駅名からの平均距離
- tokyo-distance: 都心 (東京駅) からの平均距離
結果
以下のサイトに, 可視化結果をデプロイしてあります. 地図上のポリゴン (凸包)が対応する自治体における物件の範囲に対応し, その色が順位を表します(上位が赤, 下位が緑). 各自治体の色は地価に対応します. (国土交通省,平成29年地価公示 全国の地価動向より)
popular-town-visualization.firebaseapp.com
ソースコードはGithubに上げてあります.
github.com
また, 各属性に関する散布図行列を以下に示します. 各データはtypeに基づいて着色され, 青色のデータが自治体名に対応する物件, オレンジのデータがそうでない物件を表します.
知見
順位と各属性値の間の関係
自治体名に対応する地名では, 順位と各属性値の間に関係に弱い相関が確認されました.
- 駅からの距離(p=-0.47)
- 物件数 (p=-0.45)
- 東京からの距離 (p=0.36)
理由として, "横浜"や"浦和"などの自治体名はマンション名に使用できる範囲が広いことから, ネームバリューの影響が考えられます.
一方で, 駅名にしか対応しない地名では, これらの順位と各属性間の相関は殆ど見受けられませんでした. 理由としては, 前述の名称決定のルールにおいて, 地名を使用できる地理的範囲が狭いことや, 平均物件数自体が少ないことが考えられます.